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判例・実務情報

【ハーグ、意匠】 意匠の国際登録に関するハーグ協定ジュネーブアクトの概要(改訂)



Date.2015年4月10日

1.意匠の国際登録に関するハーグ協定

 

(1) 意匠の国際登録に関するハーグ協定とは、意匠の登録に関する国際条約であり、複数国において意匠登録を行う際に必要となる手続の簡素化及びそれに伴う経費の節減効果を目的としています。

 

 ハーグ協定には、ロンドンアクト(1934年)、ハーグアクト(1960年)、ジュネーブアクト(1999年)の3 つの改正協定(アクト)がありますが、ロンドンアクトは凍結されており、現在は、ハーグアクト及びジュネーブアクトのみが機能しています。

 

 

 

2.締約国

 

アフリカ知的財産機構(OAPI)、アルバニア、アルメニア、アゼルバイジャン、ベルギー、ベリーズ、ベナン、ボスニア・ヘルツェゴビア、ボツワナ、ブルネイ、ブルガリア、コートジボワール、クロアチア、北朝鮮、デンマーク、エジプト、エストニア、欧州共同体(EU)、フィンランド、フランス、ガボン、グルジア、ドイツ、ガーナ、ギリシャ、ハンガリー、アイスランド、イタリア、キルギスタン、ラトビア、リヒテンシュタイン、リトアニア、ルクセンブルグ、マリ、モナコ、モンゴル、モロッコ、モンテネグロ、ナミビア、オランダ、ニジェール、ノルウェー、オマーン、ポーランド、韓国、モルドバ、ルーマニア、ルワンダ、サントメプリンシペ、セネガル、セルビア、シンガポール、スロベニア、スペイン、スリナム、スイス、シリア、タジキスタン、マケドニア、チュニジア、トルコ、ウクライナ、日本*1、アメリカ*2

2015410日現在、64ヶ国)

*1,*2 日本、アメリカは、2015年5月13日から発効。

 

3.出願手続

 

(1) 出願方法

・ 国際事務局に直接、又は出願人の締約国官庁を通じて間接的に出願することが可能です(4条)。

 但し、締約国が自国の官庁を通じて国際出願をすることについて留保している場合は、間接的に出願することはできません。

E-filing(WIPOのHPから出願が可能)、郵送、FAXでの出願が可能。

 

(2) 出願日の認定

・直接出願 原則,国際事務局がその国際出願を受理した日9条)。

 但し、出願書類に不備がある場合は、その不備の訂正を国際事務局が受理した日が出願日となります。

・間接出願 締約国官庁が国際出願を受領した日

 

(3) 出願人適格

・締約国の国民又は締約政府間機関の加盟国の国民

・締約国の領域内に住所,定住所,又は現実かつ真正の工業上若しくは商業上の営業所を有する者(3条)

 

(4) 願書

(a) 言語

英語,フランス語,スペイン語の何れか

(b) 願書の記載事項

・出願人の氏名等及びその連絡先

・出願人の締約国等

・創作者の情報(Identity ofthe Creator

・意匠の数,図面・写真・見本の数

 意匠の数は、最大100意匠まで含めることができます。

・意匠に係る物品、ロカルノ分類のクラス

・意匠に係る説明

 図面や写真に表された特徴についてのみ記載することができます。また、技術的特徴については記載してはならないとされています。さらに、100語を超える場合は,1語毎に2スイスフランの追加料金が必要となります。

・指定国

・優先権主張

 第一国出願の国名,出願番号,出願日を記載します。複数の意匠を含む場合は,意匠毎に優先権主張の有無を示す必要があります。

・国際博覧会

 出願意匠が出願前に国際博覧会で展示された場合には,博覧会の情報(開催場所,博覧会名,初めて展示された日付)を記載する必要があります。また、複数の意匠を含む場合は,意匠毎に展示の有無を示す必要があります。

 

 

4.国際公開

 

(1) 公開時期

(a) 原則、国際登録から6ヶ月後に国際意匠公報より公開されます(10(3)(a))。

 但し、出願人の請求により早期公開も可能です(17共通規則(1)(i)

 

(b) また、出願人の請求により,公開の繰り延べも可能です(17共通規則(1)(ii))。繰り延べ期間は,出願日又は優先日から最大30ヶ月です。

 但し、指定国に公開の繰り延べを認めない締約国が含まれている場合は、公開の繰り延べは不可となります。公開の繰り延べを認めていない締約国は以下の通りです。

 アイスランド、モナコ、ブルガリア、ウクライナ、ポーランド、シンガポール

 また、指定国に繰り延べ期間を短くしている締約国が含まれている場合は、最も短い繰り延べ期間の終了後に国際公開が行われます。

 

(2)公開内容

 国際登録簿に記載された情報,意匠の複製物,繰り延べ期間の満了した日などが公開されます。

 

 

5.審査

 

(1) 国際事務局の審査

・国際事務局は、方式審査を実施し、不備がなければ直ちに国際登録されます(10(1))。この場合、国際出願日が国際登録日となります(10(2))。

・国際出願に不備がある場合、その旨が出願人に通知されます。出願人は国際事務局の通知の日から3ヵ月以内に不備を訂正する必要があります。

 

(2) 指定国の実体審査

・国際公開後、国際事務局からその公開の写しが各指定国官庁に送付され,各指定国で実体審査が開始されます。

・各締約国の官庁は、実体審査の結果、拒絶理由を発見した場合には、拒絶通報間内(国際公開日から6ヶ月以内)に、国際事務局を経由して、出願人に拒絶通報をします。

・拒絶通報に対し出願人は、国際事務局を経由することなく、締約国官庁に対し直接応答手続を行う必要があります。

 

 

6.登録の効果

 

(1) 国際出願日をもって国際登録され、「各指定締約国において正規になされた出願と少なくとも同一の効果」を有することとなります(10(2))。

 

 

7.国際登録の保護期間

 

(1) 国際登録日から15年間

 但し、保護期間が各締約国の国内法と異なる場合は、国内法が優先されます。

 

(2) 権利の維持、管理

(a) 権利の放棄又は権利内容の減縮

 国際登録の名義人は、国際登録にかかる全指定国における権利の全て又は一部を放棄することができます。また、複数の意匠を含む国際登録については、一部の意匠を放棄することも可能です。

 

(b) 名義人の変更

 国際登録の名義人は、国際登録の全部又は一部にかかる名義人の変更手続を行うことができます。これにより、一部の指定国における権利のみを譲渡したり、一部の意匠のみを譲渡することが可能です。