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判例・実務情報

【米国、特許】 米国における特許期間の調整(Patent Term Adjustment: PTA)



Date.2014年5月13日

1.米国における特許権の存続期間

 

 米国の特許権の存続期間(Patent Term)は、原則として、米国における特許出願日(PCT出願の場合は国際出願日)から20となっています(35 U.S.C. 154 (a)(2))。しかし、以下の場合には、その特許期間が調整されることがあります。

 

2.特許期間の調整(35 U.S.C. 154 (b)

 

(1) 特許出願から特許の発行までに要した期間(審査期間)が米国特許商標庁(USPTO)の責任により必要以上に遅延した場合には、特許権の存続期間がその遅延分だけ1日単位で延長されます。

 但し、出願人の責任で審査期間が遅延していた場合は、USPTOの責任による遅延分から出願人の責任による遅延分を差し引いて特許期間が算出されます。尚、特許期間が出願から20年より早くなることはありません。

 以下に、詳しく説明します。

 

(2) USPTOの責任による遅延

 USPTOの責任による遅延としては、以下のものがあります。

 

(a) A Delay (A 遅延)USPTOの審査による遅延

 A 遅延とは、以下の場合をいいます。

・出願から14ヶ月以内に拒絶理由又は特許許可の通知を発行しなかった場合(35 U.S.C. 154(b)(1)(A)(i))

・拒絶理由通知に対する出願人の応答、又は最終拒絶に対する審判請求から4ヶ月以内USPTOが応答しなかった場合(35 U.S.C. 154(b)(1)(A)(ii))

・審判部の決定から4ヶ月以内に処理(例えば審決を考慮した新たなオフィスアクションや特許許可通知の発行)を行わなかった場合(35 U.S.C. 154(b)(1)(A)(iii))

・発行料(issue fee)の支払いから4ヶ月以内に特許を発行しなかった場合(35 U.S.C. 154(b)(1)(A)(iv))

 

(b) B Delay (B 遅延)出願の係属期間3年が経過したことによる遅延

 B 遅延とは、USPTOが出願から3年を経過して特許許可の通知を発行した場合をいいます(35 U.S.C. 154(b)(1)(B))

 

(c) C Delay (C 遅延)インターフェアランス、秘密保持命令、審判・訴訟における手続の遅延

 C 遅延とは、インターフェアレンスに要した期間、秘密保持命令により審査が中断された期間、又は審判部若しくは裁判所で特許性を有するとの主張が認められた場合におけるそれらの審理に要した期間(35 U.S.C. 154(b)(1)(C)(i)-(iii))をいいます。

 

(2) USPTOの責任による遅延分の計算

 USPTOの責任による遅延分は、下記式により算出されます。

 

USPTOの責任による遅延分 = (A 遅延+B遅延+C遅延) (A遅延及びB遅延の重複分+A遅延及びC遅延の重複分)

 

(3) 出願人の責任による遅延

 出願人の責任による遅延分としては、以下のものが挙げられます。

 

(a) 出願人が出願手続を終結させるための合理的な努力をしなかった期間に等しい期間 (35 U.S.C. 154(b)(2)(C)(i))

 

(b) オフィスアクションに対する応答期間(3ヶ月)を延長した場合の延長期間 (35 U.S.C. 154(b)(2)(C)(ii))

 

(c) 37 CFR 1.704(c)(1)-(11)に規定された要因により遅延した期間(35 U.S.C. § 154(b)(2)(C)(iii))

 

(4) その他

 B 遅延の場合(すなわち、出願から特許発行までの期間が3年を越えた場合)において、その遅延が以下の理由によるときは、その遅延分が延長期間から差し引かれます(35 U.S.C. 154(b)(1)(B)(i)-(iii))

 

(a) 継続審査請求RCERequest for Continued Examination)における審査に要した期間 (35 U.S.C. § 154(b)(1)(B)(i))

 

(b) インターフェアレンスに要した期間、秘密保持命令により審査が中断された期間、又は審判部若しくは裁判所で特許性を有するとの主張が認められた場合におけるそれらの審理に要した期間 (35 U.S.C. § 154(b)(1)(B)(ii))

 

(c) オフィスアクションに対する応答期間(3ヶ月)を延長した場合の延長期間 (35 U.S.C. § 154(b)(1)(B)(iii))

 

3.特許期間の調整に対する異議申立

 

(1) USPTOは、特許期間の調整を行った場合、特許期間の調整に関する公式の通知を特許証により行います(但し、Issue Notificationで非公式にも通知されます)。この決定に対し不服がある場合、出願人は特許発行の日から2ヶ月以内(最大5ヶ月の延長可)に見直しを請求することができます。