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判例・実務情報

【欧州審判部、特許】　明細書中の開示内容に技術的な誤りがあったが、発明の開示要件が肯定された事例。



Date.2010年12月20日

　T 0990/07　携帯装置事件　審決日：2010年2月23日

・特許審決　

・EPC83条、発明の開示

　欧州特許庁は、明細書および図面に含まれる実施例には、クレームのように、複数のアンテナ配線部分をループ形状に接続する様に開示されていない、として拒絶査定をした。

　クレーム１は下記の通りである。

1. A portable terminal apparatus (20) comprising:

a housing (24);

an antenna (25) accommodated in said housing; and

a wiring pattern connected to said antenna; wherein:

said portable terminal apparatus further comprises a multilayer printed-wiring board (26) accommodated in said housing, said printed-wiring board having said wiring pattern;

said antenna is a flat cable antenna and includes a plurality of mutually separate antenna wiring portions (31) formed on a flexible base (30);

an intersection part is provided in said printed—wiring board (26) where a part of said wiring pattern crosses another part of said wiring pattern so as to connect said antenna wiring portions in a loop form; and said flat cable antenna (25) is arranged such that its width direction is substantially upright to a plane of said printed-wiring board (26).

 

　例えば、FIG.8等では、アンテナ配線３１、およびこれにより構成されるアンテナ２５はループ状に図示されていない。

　出願人は、FIG.8等から、クレーム１は、アンテナ配線部分が複数の独立したループを構成する様に接続され得ることを意味するものと解釈され得ると主張した。これに対し、審判部はその様な主張を斥けた。

　しかし、審判部は、FIG.８等は、技術的な誤りを含んでおり、当業者であれば、クレーム１の「一つのループ形状」を解釈するにあたっては、全てのアンテナ配線部分を結合した単一のループを意味すると認識すると判断した。

　また、FIG.8等の誤った開示内容から、当業者が本件発明を実施することができるか否かについては、クレーム１に対応する実施例が本件明細書には記載されていないと認定したものの、当業者であれば発明の開示の一般的な記載やクレーム１の内容から意図した形状に到達し得る程度に十分な情報を含んでいると認定した。その結果、審判部は、本件発明が83条の発明の開示要件を満たすと判断した。

 

（審決文）　http://legal.european-patent-office.org/dg3/pdf/t070990eu1.pdf