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判例・実務情報

【米国CAFC、特許】 特許の対象となる発明 Research Corp. Technologies v. Microsoft Corp. (Fed. Cir. 2010)



Date.2010年12月20日

Research Corp. Technologies v. Microsoft Corp. (Fed. Cir. 2010) 判決日:2010年12月8日

 

 ・一部認容、差し戻し

 ・特許法101条、特許の対象

 

 Research Corp. Technologies(以下、RCT)は、MicrosoftのOSやアプリケーション等が、自己が有する6つの特許(U.S.Patent Nos. 5,111,310 (’310)、5,341,228 (’228)、5,477,305 (’305)、5,543,941 (’941)、5,708,518 (’518)、 5,726,772 (’772))を侵害するとして、アリゾナ州連邦地裁に訴えを提起した。 地裁は、非衡平行為、無効および非侵害により権利行使できないとの判断をしたが、CAFCは2008年、地裁による非衡平行為の判断は無効として、地裁に差し戻した。

 

 地裁において、Microsoftは、’310、’228の2つの特許発明は特許の対象ではなく無効であるとの主張をし、地裁はこの主張を認めた。また、’772、’305の特許は’310、’228のCIP出願であるが、’310、’228の明細書には’772、’305の発明が開示されておらず、これらの出願の出願日の利益は得られないとの判断もした。 この判決に不服のRCTは再びCAFCに上訴した。

 RCTの特許発明は、デジタル画像のハーフトーン処理方法に関するものである。’310のうち、主張されたクレーム1は、下記の通りである。

 

1. A method for the halftoning of gray scale images by utilizing a pixel-by-pixel comparison of the image against a blue noise mask in which the blue noise mask is comprised of a random non-deterministic, non-white noise single valued function which is designed to produce visually pleasing dot profiles when thresholded at any level of said gray scale images.

 

 また、’228のうち、主張されたクレーム11は、下記の通りである。

11. A method for the halftoning of color images, comprising the steps of utilizing, in turn, a pixel-by-pixel comparison of each of a plurality of color planes of said color image against a blue noise mask in which the blue noise mask is comprised of a random non-deterministic, non-white noise single valued function which is designed to provide visually pleasing dot profiles when thresholded at any level of said color images, wherein a plurality of blue noise masks are separately utilized to perform said pixel-by-pixel comparison and in which at least one of said blue noise masks is independent and uncorrelated with the other blue noise masks.

 

 101条の特許の対象に関し、Bilski最高裁判決は、「自然法則、物理的現象、及び、抽象的アイデア」を排除するという十分に確立された判例が存在するにもかかわらず、法による自由裁量権として法令の文言、目的及び設計にそぐわない他の制限を課してはならないと述べている。但し、Bilski最高裁判決は、「抽象的」についての厳格な基本原則や定義を示すことをしなかった。

 本件において、CAFCは、このBilski最高裁判決に沿った形で、本件特許発明が特許の対象となるか否かの判断をしている。 即ち、’310の明細書中には、これらの発明が、「ハーフトーン表示を行うための簡単で正確な方法において利用されるデジタルデータプロセッサで、グレースケール画像をハーフトーンに表示に加工するための方法および装置の分野での必要性」を述べており、プリンターやディスプレイなどの物理的なコンポーネントを要することも記載されていると指摘している。

 また、本件発明は、特許法の法律用語やフレームワークを覆す程、抽象的なものではないと判示している。更に、クレームされた方法は、マスクやホーフトーンを制御するためのアルゴリズムや式が組み込まれているが、これらは法定のカテゴリーや状況を覆す程、抽象的なものでもないと述べている。 その結果、’310、’228の2つの特許発明は特許の対象であり、有効であると判断した。