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判例・実務情報

【米国CAFC、特許】 American Medical Systems, Inc. v. Biolitec, Inc. (Fed. Cir. 2010) クレームにおけるプリアンブル部の記載により、発明は限定解釈されない場合がある。



Date.2010年12月15日

American Medical Systems, Inc. v. Biolitec, Inc. (Fed. Cir. 2010)

・クレーム解釈、プリアンブル

 原告のAmerican Medical Systems、 Inc.は、レーザー照射を用いた前立腺及びその他の組織の光選択的蒸散法に関する特許を有しており(No. 6、986、764。以下、「’764特許」)、当該特許権に基づきBiolitec、 Inc.に対し、侵害訴訟を提起した。

 地裁に於いて、原告は、下記クレーム31のプリアンブル部の“photoselective vaporization”の文言が発明を単純に記載したものであり、これにより本件発明を限定的に解釈すべきでないと主張した。しかし、裁判所は、“photoselective vaporization”が明細書で繰り返し使用されており、たとえ主要な革新的特徴でないとしても発明の「本質的特徴」であるとして、原告の主張を採用しなかった。

 

31. A method for photoselective vaporization of tissue、 comprising:

delivering laser radiation to a treatment area on the tissue、 the laser radiation having a wavelength and having irradiance in the treatment area sufficient to cause vaporization of a substantially greater volume of tissue than a volume of residual coagulated tissue caused by the laser radiation、 wherein the delivered laser radiation has an average irradiance in the treatment area greater than 10 kiloWatts/cm2 in a spot size at least 0.05 mm2.

 

 この点に関し、CAFCは、’764特許は、プリアンブル部の“photoselective vaporization”の文言により限定的に解釈すべきでないと判断した。

 その根拠として、CAFCは、

 ①出願経過において、先行技術との違いを主張するために、発明者が“photoselective vaporization”の文言を加えたものではないこと、

 ②プリアンブル部の“tissue”は、ボディ部の” tissue “の先行詞として使用されているが、特定のタイプのものに限定するものではないこと、

 ③プリアンブル部の“photoselective”は、発明の本質的な構成を表すものではないことを挙げている。

 

 尚、クレーム解釈においては、一般に、プリアンブル部はクレームを限定するものではないが(Allen Eng’g Corp. v. Bartell Indus.、 Inc.、 299 F.3d 1336、 1346 (Fed. Cir. 2002))、本質的な構造又は方法をいう場合や、クレームに対し”life、 meaning、 and vitality”を与えるのに必要なものである場合は、プリアンブル部により限定解釈され得る(Catalina Mktg. Int’l、 Inc. v. Coolsavings.com、 Inc.、 289 F.3d 801、 808 (Fed. Cir. 2002))。