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判例・実務情報

【米国CAFC、特許】 商業的成功の証拠は、販売されたものがクレームの範囲に含まれる限り考慮すべきであるとされた事例。 In re Glatt Air Techniques, Inc. (Fed. Cir. 2011)



Date.2011年1月11日

In re Glatt Air Techniques, Inc. (Fed. Cir. 2011)

 

 ・破棄

 ・103条(a)、非自明性、商業的成功

 

(経緯)

 本件発明は、Wursterコーターとして知られる塗布装置に関するものである(U.S.No. 5,236,503)。本件特許に対し、第三者による査定系の再審査請求がなされ、審査官はクレーム5が非自明性を欠如しているとして無効の決定をした。

 問題となったクレーム5は、下記の通りである。

 

5. In a fluidized bed coater having a product container opening upwardly into an expansion chamber and downwardly into a lower plenum chamber through an air distribution plate/screen having openings formed therethrough for upward air flow from said lower plenum chamber into said product container, said product container including a substantially cylindrical partition spaced above said air distribution plate/screen for defining an inner upbed area and an outer downbed area, and an upwardly discharging spray nozzle mounted substantially centrally within said cylindrical partition, the improvement comprising shielding means positioned adjacent said spray nozzle for shielding the initial spray pattern developed by said nozzle against the entrance of particles moving upwardly through the upbed.

 上述の通り、クレーム5はジェプソン形式で記載されており、プリアンブル部に記載されているWurster塗布装置は従来技術となっている。本件発明は、空気の壁又はその流れが、ノズル32を取り囲む様に形成されており、これにより、スプレーパターン56に早期に粒子60が入るのを防止している。審査官は、クレーム5の”shielding means(遮蔽手段)”が、前記の空気の壁又はその流れを含むものであると解釈した上で、引用例にもスプレーノズルを取り囲む空気の壁等を遮蔽手段として用いることが教示されていると認定し、当該引用例に基づき非自明性なしとした。

 特許権者は商業的成功等による非自明性の主張をしたが、審査官は商業的成功の証拠がクレーム5の範囲と一致しないとしてその主張を認めなかった。これに不服の特許権者は審判部に審判請求をした。しかし、審判部も審査官の決定を認容したため、特許権者はCAFCにその取消しを求めて訴えを提起した。

 

(争点)

 本件の争点は、以下の通りである。

 ①審判部による一応の自明の判断は適切か

 ②二次的考慮の証明を拒絶した審判部の判断には誤りがあったか

 

(CAFCの判断)

審判部による一応の自明の判断は適切か

 CAFCは、審判部による引用例の認定には誤りがあると判断した。即ち、引用例には、粒子の塊により生じた閉塞を、空気の突発により改善する方法が教示されているのであり、粒子の塊の発生自体を防止する本件発明とは異なると認定した。その結果、引用例には初期のスプレーパターンに粒子が入り込むのを防止するためにノズルを遮蔽するものが教示されているとする審判部の認定は、実質的な証拠により裏付けられたものではなく、審判部による一応の自明の判断は適切でないと判断した。

 

二次的考慮の証明を拒絶したことによる誤りがあったか

 審判部は、クレーム5の”shielding means(遮蔽手段)”には、物理的な遮蔽と、空気の壁による遮蔽の両方を含むと解釈した。一方、特許権者は、商業的成功を示す証拠として、物理的な遮蔽によるものを提出した。しかし、審判部は、空気の壁による遮蔽を用いた塗布装置に関する証拠も提出すべきであると主張した。

 この点に関し、CAFCは、企業が特許発明のうち、必要でもない態様を製品として販売することはなく、また商業的成功の証明のために、クレーム中の全ての考え得る態様を販売する必要もないと述べ、商業的成功の証拠は販売されたものがクレームの範囲に含まれる限り考慮すべきであると判示した。

 

(判決文) http://www.cafc.uscourts.gov/images/stories/opinions-orders/10-1141.pdf