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判例・実務情報

(大阪地裁、不正競争) 従業員が管理していた日常の営業に利用する顧客情報が営業秘密に該当するか否かが争われた事例



Date.2011年1月5日

平成20(ワ)8763 不正競争行為差止等請求事件 平成22年10月21日判決

 

 ・請求棄却

 ・不正競争防止法2条6項、営業秘密、秘密管理性、有用性、非公知性

 被告は、不動産の売買等を営む原告の元従業員である。原告は、被告が原告の顧客情報を持ち出し、その情報を用いて不動産の売買等の勧誘等をするために他の被告に開示した等として、大阪地裁に、損害賠償請求等の訴えを提起した

 

 本件では、原告の顧客情報が、不正競争防止法2条6項の営業秘密に該当するか否か、被告は、原告が主張する営業秘密を不正に取得したか否か(2条1項4号、7号)などが争われた。

 このうち2条6項所定の営業秘密の該当性については、「有用な営業情報」であって(有用性),「公然と知られて」おらず(非公知性),しかも「秘密として管理されている」こと(秘密管理性)が必要とされるが、本件は、これらの3要件のうち、秘密管理性を満たすか否かが問題となった。

 

 大阪地裁は、先ず、秘密管理性が要件とされる理由について、以下の通り判示している。

 

「 そもそも,不正競争防止法で「営業秘密」として保護されるために秘密管理性が要件とされているのは,営業秘密として保護の対象となる情報とそうでない情報とが明確に区別されていなければ,事業者が保有する情報に接した者にとって,当該情報を使用等することが許されるか否かを予測することが困難となり,その結果,情報の自由な利用を阻害するだけでなく,従業員の職業選択・転職の自由を過度に制限することになりかねないからである。

 

 その上で、秘密管理性の当否を検討するにあたっては、以下の点を検討すべきとした。

 

「とりわけ本件において営業秘密として問題とされる原告の顧客情報は,予め事業者である原告のもとにすべてあって従業員に示すことになる顧客情報だけではなく,従業員が日々の営業活動において取得して原告に提供することにより原告が保有し蓄積する顧客情報となるものも含まれている。その上,その顧客情報を利用した営業活動においては,従業員が特定の顧客との関係で個人的な親交を深め,その関係が会社を離れた個人的な交際関係も同然となる場合も生じ得る。そうすると,そのような情報を含む顧客情報をもって,退職後に使用が許されなくなる事業者の「営業秘密」であると従業員に認識させ,退職従業員にその自由な使用を禁ずるためには,日々の営業の場面で,上記顧客情報が「営業秘密」であると従業員らにとって明確に認識できるような形で管理されてきていなければならず,その点は,実態に即してより慎重に検討される必要がある。」

 

 本件については、顧客情報を含む契約者台帳ファイルの管理が個々の営業従業員に任されており、秘密保持契約の提携も十分にされていなかったこと、秘密保持義務を従業員に十分に徹底させていなかったこと等を理由として、退職後に使用が許されなくなる事業者の営業秘密であると明確に認識できる様な形で十分な管理がされていなかったと判断した。

 

(判決文) http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20101115094155.pdf