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判例・実務情報

(東京地裁、特許) プロダクト・バイ・プロセス・クレームの解釈



Date.2010年12月20日

平成19(ワ)35324号 プラバスタチンNa事件 判決日:平成22年3月31日  

 

・請求棄却 

・特許法70条1項、プロダクト・バイ・プロセスクレーム、技術的範囲 

・テバ ジョジセルジャール ザートケルエンムケド レースベニュタールシャシャーグ 対 協和発酵キリン株式会社

 

 原告は、「プラバスタチンラクトン及びエピプラバスタチンを実質的に含まないプラバスタチンナトリウム、並びにそれを含む組成物」の発明に関する特許権を有している。

 

 本件訂正発明は、下記の通りである。

 

【請求項1】

 次の段階:

 a)プラバスタチンの濃縮有機溶液を形成し、

 b)そのアンモニウム塩としてプラバスタチンを沈殿し、

 c)再結晶化によって当該アンモニウム塩を精製し、

 d)当該アンモニウム塩をプラバスタチンナトリウムに置き換え、そして

 e)プラバスタチンナトリウム単離すること、を含んで成る方法によって製造される、プラバスタチンラクトンの混入量が0.2重量%未満であり、エピプラバの混入量が0.1重量%未満であるプラバスタチンナトリウム。

 

 当事者間に争いのない事実によれば、被告は、高脂血症、高コレステロール血症等に対する医薬品である「プラバスタチンNa塩錠10mg「KH」」(被告製品)を、日本国内において、業として販売していた。

 また、被告製品は、プラバスタチンラクトンの混入量が0.2重量%未満であり、エピプラバの混入量が0.1重量%未満であるプラバスタチンナトリウムであった。

 

 本件の主な争点は、プロダクト・バイ・プロセス・クレーム形式で記載された本件訂正発明の技術的範囲の解釈である。

 

 先ず、東京地裁は、プロダクト・バイ・プロセス・クレームの技術的範囲の解釈について以下の通り判示している。

「特許発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載に基づき定めなければならない(特許法70条1項)ことから、物の発明について、特許請求の範囲に、当該物の製造方法を記載しなくても物として特定することが可能であるにもかかわらず、あえて物の製造方法が記載されている場合には、当該製造方法の記載を除外して当該特許発明の技術的範囲を解釈することは相当でないと解される。他方で、一定の化学物質等のように、物の構成を特定して具体的に記載することが困難であり、当該物の製造方法によって、特許請求の範囲に記載した物を特定せざるを得ない場合があり得ることは、技術上否定できず、そのような場合には、当該特許発明の技術的範囲を当該製造方法により製造された物に限定して解釈すべき必然性はないと解される。

 したがって、物の発明について、特許請求の範囲に当該物の製造方法が記載されている場合には、原則として、「物の発明」であるからといって、特許請求の範囲に記載された当該物の製造方法の記載を除外すべきではなく、当該特許発明の技術的範囲は、当該製造方法によって製造された物に限られると解すべきであって、物の構成を記載して当該物を特定することが困難であり、当該物の製造方法によって、特許請求の範囲に記載した物を特定せざるを得ないなどの特段の事情がある場合に限り、当該製造方法とは異なる製造方法により製造されたが物としては同一であると認められる物も、当該特許発明の技術的範囲に含まれると解するのが相当である。

 

 即ち、プロダクト・バイ・プロセス・クレームのクレーム解釈にあたっては、原則として、製造方法によって製造された物に限られると解すべきであり、物の構成により当該物を特定することが困難であり、当該物の製造方法によって物を特定せざるを得ないなどの特段の事情がある場合に限り、当該製造方法とは異なる製造方法により製造された同一物も、その技術的範囲に含まれるとするものである。

 

 本件訂正発明については、もともと製造方法の記載がなく、プラバスタチンラクトンやエピプラバの含有量を示すことのみで特定したプラバスタチンナトリウムに関する請求項が存在していた。

 その結果、東京地裁は、本件訂正発明については、物の特定のために製造方法を記載する必要がないにもかかわらず、あえて製造方法の記載がされていると認定し、特許請求の範囲に記載された製造方法によって製造された物に限定されないとする特段の事情があるとは認められないと判断した。  

 この点に関し、原告は、本件特許の訂正請求をしたことから、訂正前の請求項との関係における出願経過は、訂正後の請求項との関係では意味をなさないと主張したが、裁判所は、物の構成のみで特定された請求項が拒絶査定を受けた後に削除されていることを考慮し、その経過を無視することはできないと述べている。

 

 また、「訂正前の請求項に係る発明の技術的範囲が製造方法によって限定されたものと解される場合に、仮に、訂正によって出願経過が意味をなさなくなり、訂正後の請求項に係る発明の技術的範囲が製造方法の限定のないものと解することになるとすると、実質的に、訂正によって特許発明の技術的範囲が拡張されることを認めることになってしまい、相当でない。」とも判示している。

 

 さらに、プロダクト・バイ・プロセス・クレーム形式で記載された発明について、104条の生産方法の推定規定が類推適用されるか否かについても争われている。 この点について、東京地裁は、本件各発明は、製造方法の限定が付されたものであっても,物の発明であるから,特許法104条が適用されることはなく、同条を準用するという明文の規定もないから,本件各発明について,同条が準用されることもない、と判示している。

 

(判決文) http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100421142638.pdf