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判例・実務情報

(知財高裁、商標) 「ヤクルト」の容器の立体商標 知財高裁が認める。



Date.2010年12月17日

 平成22年(行ケ)第10169号 ヤクルト事件 判決日:平成22年11月16日  

 

・請求認容 ・商標法3条2項、立体商標 

・株式会社ヤクルト本社 対 特許庁長官

 

 特許庁は、原告が使用する包装用容器には「ヤクルト」「Yakult」の文字商標が入っており、立体的形状のみが独立して自他商品識別力を獲得したものとは認められず、商標法3条2項(使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの)には該当しない、などとして拒絶審決をした。原告はこれを不服として、知財高裁に訴えを提起した。

 

 知財高裁は、立体商標に商標法3条2項の適用が肯定されるためには、

 ①使用された立体的形状がその形状自体及び使用された商品の分野において出願商標の立体的形状及び指定商品とでいずれも共通であること、

 ②出願人による相当長期間にわたる使用の結果、使用された立体的形状が同種の商品の形状から区別し得る程度に周知となり、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っていること、が必要とした。

 

 更に、立体的形状を有する使用商品にその出所である企業等の名称や文字商標等が付されていたとしても、そのことのみで上記立体的形状について3条2項の適用を否定すべきではなく、上記文字商標等を捨象して残された立体的形状に注目して、独自の自他商品識別力を獲得するに至っているかどうかを判断すべきとした。

 その上で、本件商標については、これまでの販売実績や市場占有率、アンケート調査の結果等を考慮して、本件容器の立体的形状が、需要者によって原告商品を他社商品との間で識別する指標として認識されていたと認定した。

 

 更に、アンケート調査において、本件容器の立体的形状のみを提示された回答者のほとんどが原告商品「ヤクルト」を想起すると回答していること等から、本件容器の立体的形状は、本件容器に付された平面商標や図柄と同等あるいはそれ以上に需要者の目に付きやすく、需要者に強い印象を与えるものと認められるから、本件容器の立体的形状はそれ自体独立して自他商品識別力を獲得しているとした。

 

 また、乳酸菌飲料の容器には本件容器と酷似した模倣品が数多く存在するとの需要者の認識があり、この事実は、類似の形状の容器を使用する数多くの他社商品が存在するにもかかわらず、需要者はそれら容器の立体的形状は本件容器の模倣品であると認識しているということを示していると認められ、本件容器の立体的形状に自他商品識別力があることを強く推認させると指摘している。