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判例・実務情報

【知財高裁、商標】 二段併記の登録商標の50条1項における社会通念上の同一が問題となった事例



Date.2012年10月1日

知財高裁平成24年02月21日判決 平成23(行ケ)10243号 ももいちご事件

 

・請求認容

・X 対 Y

・商標法50条1項、不使用取消審判、社会通念上の同一、二段併記

 

(経緯)

 被告は後記の本件商標につき商標法50条1項に基づき不使用商標登録取消審判請求をしたところ、特許庁は当該商標登録を取り消す旨の審決をした。本件は、この審決に不服の原告が、その取消しを求めて知財高裁に訴えを提起したものである。

 

(本件商標)

 本件商標は下記の通りである(指定商品:31類「いちご」)。

 

(使用商標)

 使用商標は下記の通りである。

 

(審決の内容)

 審決は、原告が使用を主張する前記使用商標2が、不使用取消審判請求の登録前3年以内に使用していたと認めることはできない、等とするものであった。

 

(裁判所の判断)

 原告は、本件取消審判請求の予告登録前の3年以内に、通常使用権者が使用商標2の形態で本件商標を使用していたと主張した。

 原告の当該主張において、本件商標と使用商標2の社会通念上の同一性の有無が主な争点となった。

 

 通常使用権者が使用していた使用商標は、「ももいちご」「百壱五」の文字が入った商品タグを用いていたが、同商品タグでは、「百壱五」の文字が「ももいちご」の文字に比べて小さい上、他の文字(「登録第4323578号」等)も使われるなど、本件商標において「ももいちご」「百壱五」の文字をほぼ同じ大きさで二段に並べたものとは、使用態様が異なっていた。

 しかし、裁判所は、「不使用商標登録取消審判における商標の使用とは、商標法50条1項が明示するように、必ずしも登録された商標と同一の商標の使用でなくても社会通念上同一と認められる商標の使用であれば足りると解されている。これは、現実の社会では、願書添付の商標見本と厳密な意味での同一の商標を、営業上絶えず同じ態様で固定して用いることはむしろまれであり、登録商標の使用の解釈を社会通念に合致するように行う必要があるためである。」とした上で、本件商標については、以下の通り判示した。

 

 先ず、商品タグにおいては、「文字の色や大きさから、「ももいちご」の部分が最も大きな自他識別能力を有することは明らかであり、「佐那河内の」の部分は、それに次いで自他識別能力を有するといえる。他方で、文字の大きさや内容からすれば、「登録第4323578号」「平成10年商標登録願第30450号」「百壱五」の部分は、いずれも自他識別能力は非常に小さいといえる。 」とした。

 

 その一方で、「百壱五」の部分については、原告が「単に登録要件を充足するために本件商標に付加したものであり、客観的にみても、本件商標において漢数字である「百壱五」の部分は、「ひゃくいちご」のほか「ももいちご」とも一応読み得るものであり、ここから、数字の100と1と5、又は何らかの「いちご」との観念が生じ得るものの、あくまで平仮名の「ももいちご」を補足する部分であり、「百壱五」の部分自体が顕著な自他識別能力を有することは期待されていないと解されることからすれば、「ももいちご」「百壱五」の両方の文言が、文字の変更や欠落などなく、共に用いられていれば、字体や字の大きさに違いがあるとしても、本件商標を表す「登録第4323578号」「平成10年商標登録願第30450号」も表示されていることも併せ考慮すると、社会通念上、本件商標と同一の商標が使用されていると解すべきである。 」と判示した。

 

 

(判決文) http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120224084322.pdf