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判例・実務情報

(知財高裁、商標) ASRock事件 剽窃的な商標出願や登録商標は公序良俗に反するとして、商標法4条1項7号を適用。



Date.2010年12月15日

平成21年(行ケ)第10297 ASRock事件 平成22年8月19日判決

 

・商標法4条1項7号、公序良俗、剽窃出願

・株式会社ユニスター 対 Y  

 

 剽窃的な商標出願や登録商標は、公正な取引秩序を乱し、公序良俗を害するおそれがあることから、公正な取引秩序の維持を目的とする商標法の趣旨に沿った実質的な判断がされるべきであるとして、商標法4条1項7号の適用により無効とされた。

 

 原告の株式会社ユニスターは、台湾のコンピュータのマザーボードを製造するASRock社の日本における正規輸入代理店である。  被告Yは、本件商標を、マドリッド協定議定書に基づき、韓国の商標登録を基礎登録として、日本を指定する国際登録出願をした。これにより、本件商標は、国際登録第818186号として我が国で商標登録されていた。しかし、当該基礎登録が韓国において無効審判により無効とされたため、国際登録が取り消された。その後、商標法68条の32に規定する国際登録の取消し後の商標登録出願の特例に基づく出願として登録出願をし、設定登録された。

 

この登録商標に対し原告は、商標法4条1項7号違反などを理由に、特許庁に無効審判を請求した。

 特許庁は、ASRock社の引用商標は独創的な造語といえず、本件商標の出願日以前において、我が国の取引者・需要者の間において、周知・著名になっていたものともいえない、と判断した。 また、本件商標の態様からみれば、被告が引用商標をそのままの態様において剽窃したというような性質のものでもないこと等を理由に、被告と本来商標登録を受けるべき者であると主張するASRock社との間の商標権の帰属等をめぐる問題は、あくまでも、当事者同士の私的な問題として解決すべきであるから、このような場合においてまで、『公の秩序や善良な風俗を害する』特段の事情がある例外的な場合と解して、商標法4条1項7号を適用することはできない、と判断した。

 これに対し、裁判所は、「日本又は外国で使用されて一定の評価を得ている商標を他人が抜け駆け的に出願したような場合には、出願人の悪意や出願の動機の不純性等の主観的要素を参酌して、その登録は拒絶又は無効とすべきである。他人が選択して使用している、又は選択しようとしている商標を横から剽窃的に出願することは公正な取引秩序を乱すものであり、公序良俗を害するおそれがあるのであって、公正な取引秩序の維持を目的とする商標法の趣旨に沿った実質的な判断がされるべきである。」として、上記の審決の判断は誤りであるとした。

 また、他人の商標の剽窃的な出願であるか否かは、被告が、文字構成において独創的な造語と認められる「ASROCK」と同一文字構成を使用した本件商標を出願した点こそ重視されるべきであって、引用商標と本件商標の外観上の相違は、被告の悪意の出願を否定する根拠とならない、とも判示した。