E

判例・実務情報

(知財高裁、特許) 特許法112条の2第1項の不責事由



Date.2010年12月16日

 平成22年(行コ)第10002 特許料納付書却下処分取消請求控訴事件 平成22年9月22日判決

・特許法112条の2第1項、特許料、追納、不責事由、パリ条約5条の2第2項、過失 

・バイエル・アクチエン ゲゼルシヤフト 対 国、法務大臣、特許庁長官

 特許法112条の2第1項の「その責めに帰することができない理由」とは、通常の注意力を有する当事者が通常期待される注意を尽くしてもなお避けることができないと認められる事由により追納期間内に納付できなかった場合をいう。

 控訴人(バイエル・アクチエン ゲゼルシヤフト)は本件特許料の納付手続をCPAに委託していたが、CPAは、その担当者が病気休暇等の事情もあって業務が滞った結果、本件特許料等の追納期限を経過した。原審において、控訴人は、追納期間内に特許料及び割増特許料を納付することができなかったことについて、特許法112条の2第1項所定の「その責めに帰することができない理由」があるとして、本件却下処分の取消しを求めた。

 これに対し、原判決は、特許法112条の2第1項所定の「その責めに帰することができない理由」とは、天災地変、あるいはこれに準ずる社会的に重大な事象の発生により、通常の注意力を有する当事者が万全の注意を払っても、なお追納期間内に特許料を納付することができなかったような場合を意味し、本件に於いては、控訴人に「その責めに帰することができない理由」があるとは認められないから、本件却下処分に違法はないとして、控訴人の請求を棄却した。本件は、その控訴審である。

 裁判所は、特許法112条の2第1項所定の「その責めに帰することができない理由」とは、通常の注意力を有する当事者が通常期待される注意を尽くしてもなお避けることができないと認められる事由により追納期間内に納付できなかった場合をいうと判示し、その理由として、

 ①拒絶査定不服審判(特許法121条2項)や再審の請求期間(同法173条2項)を徒過した場合の救済条件や他の法律との整合性

 ②そもそも特許権の管理は特許権者の自己責任の下で行われるべき

 ③失効した特許権の回復を無制限に認めると第三者に過大な監視負担をかけることとなることを踏まえて立法されたものであることを挙げている。

 控訴人は、期間内に手続できなかった場合の救済規定の解釈が諸外国よりも厳しい扱いになっていることは問題であり、知的財産のグローバル化に対応して特許権者を広く保護するべきであると主張したが、裁判所は、パリ条約5条の2第2項の規定により、特許権の回復に関する要件が各締結国の立法政策に委ねられている点を挙げ、現行法下では、「その責めに帰することができない理由」の文言を、通常有する意味から乖離した解釈をすることは適切でないとした。

 また、控訴人は、代理人の過失を本人の過失と同視すべきでないと主張したが、特許権者又は雇用関係にある被用者に過失がある場合と、特許権者が委託した外部組織たる第三者に過失がある場合とで、特許権の回復の成否が異なるいわれはなく、いかなる方法で特許料を納付するか自らの判断で選択した以上、委託を受けた第三者に過失がある場合には、特許権者側の事情として、特許法112条の2第1項所定の「その責めに帰することができない理由」には当たらない、と判示した。