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判例・実務情報

(知財高裁、特許) 訂正審決の確定と請求不成立審決の取消訴訟の帰趨



Date.2010年12月20日

 平成21(行ケ)10381 カニューレ挿入装置事件 判決日:平成22年11月30日

・請求棄却 

・メディキット株式会社、東郷メディキット株式会社 対 Y 

・特許法29条2項、進歩性、容易想到性

 原告は、「安全後退用針を備えたカニューレ挿入装置」の発明に関する特許権者である(特許第2,647,132号)。被告は、本件特許発明がサポート要件違反、進歩性欠如の無効理由を有するとして無効審判を請求した。

 特許庁は、これらの無効理由はいずれも認められないとして請求不成立審決をした。この審決に不服の原告らは、その取消しを求めて知財高裁に訴えを提起した。

 尚、被告の特許権者は、訴えの提起後に、減縮を目的とする訂正審判を請求し、特許庁は、本訴の係属中に訂正を認める審決をし、その後確定した。

 無効審判の対象となっていた特許発明は、訂正の効果が遡及的に及ぶことにより異なったものとなっている。そのため、訂正後の特許発明についての無効理由の存否は、改めて特許庁で審理判断されるべきものとなる。

 しかし、当事者双方が、訂正後の発明に基づいて無効理由の有無を審理判断することを求めていることから、知財高裁は、本件に於いては、訂正後の発明についての無効理由の有無を判断した。

「 特許庁がなした無効不成立の審決(したがって無効審決は除かれる。)の取消訴訟係属中に特許請求の範囲の減縮を内容とする訂正審決が確定した場合、訂正後発明との関係で上記無効理由の有無が訂正審決において実質的に特許庁の判断が示されており、かつ当事者双方が訂正後発明との関係で裁判所が無効理由の有無につき審理判断することに異議がないときは、裁判所は、相当と認める限り、訂正後発明につき改めて特許庁の特許無効審判の判断を経る必要があるとして原審決を取り消すことなく、訂正後発明との関係における無効理由の有無を判断することができると解される。

 そして、本件に於いては、

 ・本件訴訟は、請求不成立審決の審決取消訴訟であること

 ・訴えの提起後になされた訂正審判に於いては、訂正後の発明について、本件無効審判請求における進歩性欠如の無効理由について、実質的に判断されていること

 ・訂正後の発明について、審判請求に係る進歩性欠如の無効理由の有無の判断を、当事者双方が求めていること

を考慮して、当裁判所が訂正後の発明を前提として無効理由の有無を審理判断することができるとした。

 最高裁第三小法廷平成11年3月9日判決(民集53巻3号303頁)「大径角型鋼管事件」は、無効審決の審決取消訴訟の帰趨につき、その訴訟の係属中に訂正審決の認容審決が確定した場合には、当然に無効審決が取り消されなければならないとする、いわゆる当然取消説を採用している(最高裁第三小法廷平成11年4月22日判決(判時1675号115頁)「6本ロールカレンダーの構造及び使用方法事件」も同旨)。

 一方、この当然取消説に対し否定的な見解を判示したものとして、東京高裁平成14年11月14日判決 平成11年(行ケ)第376号「「建築物の骨組構築方法事件」がある。この裁判例では、本件が、無効審決の取消しを求めるものではなく、請求不成立審決の取消し求めるものであり、大径角型鋼管事件の射程が及ぶものではないと判示している。同様の判断を行った裁判例としては、他に東京高裁平成16年01月22日判決 平成13(行ケ)480号「標識照明システム及び方法事件」がある。

 尚、平成15年の特許法改正により、無効審判の特許庁への係属中だけでなく、その審決取消訴訟が裁判所に係属中も訂正審判の請求が制限された。また、訂正審判の請求は、無効審判の審決取消訴訟の訴えの提起から90日以内に限られることになった(126条2項)。

 

(判決文) http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20101207100551.pdf