・G1/16 審決日:2017年12月18日 ・EPC第123条(2)、補正、除くクレーム、新規事項の追加
欧州特許庁の拡大審判部(Enlarged Board of Appeal)は、特許出願時に明細書等に開示されていなかった主題をクレームから除く、ディスクレーマー補正の適法性に関する判断基準を示した。
(背景) クレームの主題は、通常、積極的な技術的特徴によって定義される。しかし、クレームの主題は、それがある要素や技術的特徴を持たないことを明示するために、ディスクレーマー(いわゆる「除くクレーム」)により定義することも可能である。
ここで、ディスクレーマーの導入には、以下のようなケースに場合分けをすることができる。 (1)出願当初の明細書等に開示がない主題を、クレームから除く補正を行う場合。 (2)出願当初の明細書等に開示がある主題を、クレームから除く補正を行う場合。
拡大審判部はこれまで、ディスクレーマー補正の判断基準に関し、以下のような2つの審決を行っている。
(a)G1/03 出願当初の明細書等に開示がない主題をクレームから除く補正を行う場合、以下のケースでは、123条(2)違反(新規事項の追加)とはならない。
・新規性欠如の拒絶理由を回避する場合。 ・偶然の一致による新規性欠如の拒絶理由を回避する場合。 ・非技術的理由により特許性が排除されている主題を取り除く場合。
但し、以下のケースではディスクレーマー補正は認められないとしている。
・進歩性の欠如や不十分な開示の治癒を目的とする場合。 ・明確性及び簡潔性を満たさないディスクレーマー補正を行う場合。
(b)G2/10 出願当初の明細書等に開示がある主題をクレームから除く補正を行う場合、以下のケースでは、123条(2)違反とはならない。
・ディスクレーマーの導入後にそのクレームに残る主題が、共通の一般知識を用いる当業者に対し、明示的に又は黙示的に、直接的かつ明瞭に開示されている場合。 ・但し、上記は、明細書の開示の性質と範囲、除かれた主題の性質と範囲、および、補正後にクレームに残された主題との関係を考慮して、個々のケースの全体の技術的状況に対する技術的評価を要する。
今回のケースでは、技術審判部は、出願当初の明細書等に開示がない主題をクレームから除く補正を行う場合に、過去の審決で示された判断基準がどの様に適用されるのか、その法律問題を拡大審判部に付託した。
(拡大審判部の決定) 拡大審判部に付託された質問は、以下の通りである。
質問1:審決G2/10が示した判断基準は、出願当初の明細書等に開示がない主題をクレームから除くディスクレーマー補正を行う場合にも適用されるのか。(概要) (尚、質問2及び3は、質問1の回答が肯定される場合の追加質問であり、拡大審判部は質問1の回答を否定したため、省略する。)
質問1に対し、拡大審判部は以下の通り決定した。
出願当初の明細書等に開示がない主題を除くディスクレーマー補正を行ったクレームについては、(審決G2/10で示された判断基準ではなく)審決G1/03で示された判断基準が適用される。
ディスクレーマー補正において、技術的貢献を提供するような補正を行うことはできない。特に、進歩性の評価や開示の十分性の問題に関連するディスクレーマー補正はできない。また、ディスクレーマー補正は、新規性の回復や、非技術的理由により特許性が排除されている主題を取り除く以上のものとすることはできない。
尚、本審決では、出願当初の明細書等に開示がある主題を除くディスクレーマー補正について、審決G2/10で示された判断基準が適用されることも示された。
(参照元) ・EPO Enlarged Board of Appeal clarifies standard for examining “undisclosed disclaimers” ・G1/16
・G1/16 審決日:2017年12月18日
・EPC第123条(2)、補正、除くクレーム、新規事項の追加
欧州特許庁の拡大審判部(Enlarged Board of Appeal)は、特許出願時に明細書等に開示されていなかった主題をクレームから除く、ディスクレーマー補正の適法性に関する判断基準を示した。
(背景)
クレームの主題は、通常、積極的な技術的特徴によって定義される。しかし、クレームの主題は、それがある要素や技術的特徴を持たないことを明示するために、ディスクレーマー(いわゆる「除くクレーム」)により定義することも可能である。
ここで、ディスクレーマーの導入には、以下のようなケースに場合分けをすることができる。
(1)出願当初の明細書等に開示がない主題を、クレームから除く補正を行う場合。
(2)出願当初の明細書等に開示がある主題を、クレームから除く補正を行う場合。
拡大審判部はこれまで、ディスクレーマー補正の判断基準に関し、以下のような2つの審決を行っている。
(a)G1/03
出願当初の明細書等に開示がない主題をクレームから除く補正を行う場合、以下のケースでは、123条(2)違反(新規事項の追加)とはならない。
・新規性欠如の拒絶理由を回避する場合。
・偶然の一致による新規性欠如の拒絶理由を回避する場合。
・非技術的理由により特許性が排除されている主題を取り除く場合。
但し、以下のケースではディスクレーマー補正は認められないとしている。
・進歩性の欠如や不十分な開示の治癒を目的とする場合。
・明確性及び簡潔性を満たさないディスクレーマー補正を行う場合。
(b)G2/10
出願当初の明細書等に開示がある主題をクレームから除く補正を行う場合、以下のケースでは、123条(2)違反とはならない。
・ディスクレーマーの導入後にそのクレームに残る主題が、共通の一般知識を用いる当業者に対し、明示的に又は黙示的に、直接的かつ明瞭に開示されている場合。
・但し、上記は、明細書の開示の性質と範囲、除かれた主題の性質と範囲、および、補正後にクレームに残された主題との関係を考慮して、個々のケースの全体の技術的状況に対する技術的評価を要する。
今回のケースでは、技術審判部は、出願当初の明細書等に開示がない主題をクレームから除く補正を行う場合に、過去の審決で示された判断基準がどの様に適用されるのか、その法律問題を拡大審判部に付託した。
(拡大審判部の決定)
拡大審判部に付託された質問は、以下の通りである。
質問1:審決G2/10が示した判断基準は、出願当初の明細書等に開示がない主題をクレームから除くディスクレーマー補正を行う場合にも適用されるのか。(概要)
(尚、質問2及び3は、質問1の回答が肯定される場合の追加質問であり、拡大審判部は質問1の回答を否定したため、省略する。)
質問1に対し、拡大審判部は以下の通り決定した。
出願当初の明細書等に開示がない主題を除くディスクレーマー補正を行ったクレームについては、(審決G2/10で示された判断基準ではなく)審決G1/03で示された判断基準が適用される。
ディスクレーマー補正において、技術的貢献を提供するような補正を行うことはできない。特に、進歩性の評価や開示の十分性の問題に関連するディスクレーマー補正はできない。また、ディスクレーマー補正は、新規性の回復や、非技術的理由により特許性が排除されている主題を取り除く以上のものとすることはできない。
尚、本審決では、出願当初の明細書等に開示がある主題を除くディスクレーマー補正について、審決G2/10で示された判断基準が適用されることも示された。
(参照元)
・EPO Enlarged Board of Appeal clarifies standard for examining “undisclosed disclaimers”
・G1/16